野原:実は17年前、心臓の不調に加え、乳がんの疑いも出てきたの。そのとき「あ、保険入ってない」と気づき、乳がん検査が“シロ”になった時点で、がん保険に加入しました。周囲からのすすめもあって、どちらも損保系のがん保険を選びました。がん診断時一時金が回数無制限で出るタイプで、S社は100万円、T社は200万円出るものです。というのも、うちはがん家系なので、乳がんの次は大腸がん、次は直腸がん……なんて、一時金を手に入れる皮算用をしていたわけ。今回は境界悪性でダメだったんだけどね。
病院の担当医によれば、境界悪性腫瘍は良性腫瘍の中の17%しかないそう。「がん細胞と顔が違う」と医師特有の言い方もしていたわ。私の場合、その後、境界悪性のステージがIAからICへ進行したんだけれど、10年生存率も高いと言われたので希望が湧いてきたわ。
実は4年前、T社の人から女性特有の病気に罹患したらウン百万円出る特約を付けませんか?と提案されたんだけど、結構その掛け金が高くて「うん」と言えなかった。いま思えば、今回の境界悪性腫瘍にも対応しているドンピシャの提案だったんだけど、後悔先に立たずよね。
保険が下りない場合、下りる場合の違いは?
野原:ほかにも素人がよく知らない“実は保険が下りないケース”ってあるのかしら?
S氏:がん保険でよくあるのは、「上皮内がん(上皮内新生物)」ですかね。これは境界悪性腫瘍と違い、明らかながんで、進行する可能性があるものの、がん細胞が中に浸潤していない段階で切ってしまえば終わる“軽度ながん”と判断されるため、がん保険の保障対象外となることがあります。ただ最近は上皮内がんでも給付金が受け取れる商品もたくさんありますが。
ほかには、
●病気を隠したり健康状態を偽って契約する告知義務違反や詐欺の場合
●契約から90日間の免責期間に診断された場合
●月々の保険料を2か月以上滞納して失効になる場合
なども、保険が下りない要素になるので注意が必要です。
野原:逆に、“意外にも保険が出た”というケースは?
S氏:実は、顧客に寄り添うスタンスの保険会社であれば、書類を上手に取ることによって、無理だと思ったケースでも保険が下りることがしばしばあります。最初からあきらめないことが大切です。
例えば、腸閉塞になった人にがん保険から給付金が出たこともあります。腸閉塞はがん保険の対象外ですが、大腸がんで手術すると腸閉塞になりやすい。そこで「大腸がん後の腸閉塞の起因はがんだ」という診断書を担当医に作ってもらい、審査担当部署に回したところ、見事に通ったんです。
野原:保険会社って親切なのね。