そこで重要なのは、保証期間の約束です。保証期間内であれば、注文主の不適切な使用方法による不具合を除いて、業者は無償で修繕する義務があります。通常、保証期間は契約書に規定されたり、保証書が交付されたりします。
ご質問では、業者は「何かあればいつでも対応する」と言ったとのことですが、口頭だけでは保証合意の証明は困難です。そこで修繕を請求するためには、2年間で塗装剥がれなどが生じたことが契約の内容に適合しない仕事であったこと(契約不適合)、あるいは、その原因が手抜き作業など業者に責任があること(債務不履行)を説明する必要があります。
この点、その業者は責任を否定していないので、問題がある工事だったといえるようです。よって修理を要求できると思います。
業者に修繕義務があるのに応じなければ、裁判所の力を借りて権利を実現できますが、素人では難しいので弁護士に相談するのがよいでしょう。
しかし肝心なことは、業者に修繕できる、あるいは修繕費用を負担できる資力があるかどうかです。業者が倒産すると、修繕させたり費用負担を求めることは困難です。業者が会社であって社長個人が保証すれば、社長個人の資力によっては回収の可能性がありますが、閉店間近では約束しないと思われます。
会社清算や破産手続き等法的処理をする場合は、債権者に債権の届け出を催告し、業者の資産を処分して債権者に配当しますが、きわめて低率になるのが普通です。
そこであまり期待はできませんが、いまのうちに塗り直し費用の負担責任があることを文書にしてもらっておくとよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2023年1月19・26日号