元日に届く年賀状は、日本の正月に欠かせないものだったが、昨今では、SNSの普及や紙資源の節約の流れもあり、配達数も減少。日本郵便によると、2023年の元日に配達された年賀状は、前年から14%減ったおよそ8億8200万枚。14年連続で減少している。そんななか、完全な“脱年賀状”を達成した人も少なくない。年賀状がなくなって年始の挨拶はどうしているのか、また、その心境はどのようなものか。
フリーランスでウェブメディアや雑誌などの制作を手掛けるメディアプロデューサー・山本さん(仮名、40代男性)は、2023年に届いた年賀状は0枚。自身も1枚も出していないという。
「以前会社員だったころは、会社で作った年賀状を仕事の関係先に出していましたし、関係先からもたくさん届いていました。20年くらい前に独立してから、自分からは年賀状を出すのをやめたんですが、それでも取材した先の事務所、レコード会社、飲食店などからは、年賀状が届いていました。でも、今年はついに、そういったところからの年賀状もまったく届かなかったんです。いよいよ時代が変わってきたことを実感しました」(山本さん・以下同)
仕事の関係先からの年賀状が急激に減少したのは、コロナ禍以降だと山本さんは感じている。
「リモートワークが普及したタイミングで、いろいろな慣習が一気に終わってきているのかもしれません。『テレワークになると会社や事務所に年賀状が届いても見ないから、貰っても見るのがいつになるかわからず困るし、こちらも出さないことにした』と会社員の友人が話していました。
またあるプロダクションの幹部に聞いた話では、『コロナ禍で業績が悪化し、経費削減の意味合いで年賀状をやめた』とのこと。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを示すという理由で、年賀状による紙資源の浪費をやめたという取引先もありました」
紙の年賀状ではなく、メールで年賀状を送る企業もあったが、最近ではそういったケースも減っているようだ。
「今年メールで年賀状が届いたのは2件。ほとんど付き合いのないところで、おそらく、名刺交換した相手を全員メーリングリストに入れ、一括配信しているだけかなという印象です。つまり、宣伝用のダイレクトメールのようなもの以上の意味はないということです」