今年、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた民法改正後、初めての「成人の日」を迎えた。多くの自治体では、満20歳を迎えた学年を対象に「二十歳の集い」などに名称を変更して式典が開催されたという。成人式の風物詩といえば女性の振袖姿が思い浮かぶが、昨今のコロナ禍や物価高の影響から、家庭によっては振袖などの準備にかかる負担がトラブルの火種になることもあるようだ。先日、娘を成人式に送り出したという50代女性の話を、フリーライターの吉田みく氏が聞いた。
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埼玉県在住のパート主婦・リエさん(仮名、50歳)は、夫と長女(大学生)の3人暮らし。すでに社会人の長男は都内で一人暮らしをしている。成人の日を前にしたある日、リエさんは20歳の娘と夫を相手に、言い争いをしてしまったそうだ。
「先日、娘から『成人式だけど、10時に式典会場まで送ってね』と言われてビックリ。友達同士で行くものかと思っていただけに、私がアテにされているとは思ってもいませんでした」(リエさん、以下同)
式典会場までの距離は車で20分ほど。よく考えれば、振袖姿で長距離を歩いたり、電車やバスを乗り継いだりするのは大変だと理解したリエさんは、娘にこんな提案をした。
「娘に『半額出すから、タクシーで行って』と言いました。片道で5000円弱と決して安い金額ではありませんが、特別な日ですので私としては精いっぱいの提案のつもりだったんです。ですが娘は、『お金ないよ、お母さんが送ってよ』『友達は親が送迎してくれるって。それが普通じゃないの?』と不満げ。私はその日はパートの休みが取れず、どうしても送ることはできませんでした……」
リエさんの夫は免許を持っていないため、自家用車での送迎はリエさんがするしかない。シフトを代わってもらうことも考えたが、代役が見つからず難しい状況だったそうだ。
リエさんが夫に相談すると、「タクシー代くらい全額出してあげなさい」とあっさり言われたという。この一言がリエさんの逆鱗に触れることとなる。