「余裕のある家庭しか出席できない?」
「そもそも、私がパートに出ているのは夫の稼ぎだけでは生活が苦しいからです。簡単に“出してあげればいい”なんて言わないでほしい。娘の振袖レンタル代にかかった約20万円と、当日の同窓会の参加費7000円は、私の貯金から出しました。
本当にギリギリまで、娘のためにできる限りやったつもりだったんです。式典会場への交通手段まで思いが至らなかったのは事実ですが、タクシー代の数千円とはいえ、もうこれ以上は勘弁して欲しい……。余裕のある家庭しか成人式は出席できないのかなと思ってしまうほどです」
リエさんがお金のことをシビアに考えなくてはいけないのにはこんな理由があった。
「娘は6年制の私大薬学部に通っています。授業が忙しく、バイトのシフトにもなかなか入れないようです。結局、親がお小遣いを渡さなくてはいけない状況。留年されるくらいなら学業に専念してほしいし、娘の将来のためと思って長年パートで頑張ってきましたが、今回の件で心が折れそうです……」
結果として、都内で一人暮らしをしている長男に送迎の運転を頼むことになった。長男からは「ハレの日に家族で揉めるなよ」と注意されたそうだ。
人生で一度きりのイベントである成人式だが、金銭的な部分で負担を感じる人は多いのではないだろうか。今後、法律上の成人年齢である18歳を対象にした式典が増えるとしたら、進学や就職の準備とタイミングが重なって、家計の負担がさらに増す懸念もある。式典を主催する自治体側には、これまで以上に家計への配慮が求められるかもしれない。(了)