森下がトランプの自宅であるタワーの58階に招かれ、人気絶頂だったWBCヘビー級チャンピオンのマイク・タイソンとステーキランチを食べたのも、新発田のセッティングによるものだ。新発田がこう回想した。
「森下会長は決断が速いですからね。初対面のときすぐにトランプタワーを気に入って、即決しました。そのあとのマイク・タイソンとの会食には私は参加していませんが、段取りだけはしました」
森下は初めにトランプタワーの5部屋を買い、結果的に56階のワンフロアー3部屋を所有することになる。森下はここをニューヨークの拠点とし、新発田たちから貴重なビジネスの情報を入手してきた。世界の名立たる実業家たちとの出会いも、ある意味で新発田のおかげかもしれない。
「森下会長は日本で上総カントリーをつくったとき、ジャック・ニクラウスにコースの設計・監修を頼んだ。そのときにも私は立ち会いました。ニクラウスが住んでいたマイアミの別荘に会長といっしょに設計図を持っていったことをよく覚えています。森下会長は、それだけで少なくとも100万ドル以上払ったと思います。ニクラウスは快くコースの設計・監修を引き受けてくれました。『コースに関する問題点を調べて後日連絡します』と言い、別れました」(新発田談)
【プロフィール】
森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『菅義偉の正体』『墜落「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』など。最新刊は『バブルの王様 森下安道 日本を操った地下金融』。