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“闇将軍”と“闇経済の帝王”の知られざる交友 田中角栄から贈られた推定2億円の日本絵画

「マムシ」と呼ばれた森下安道氏

「マムシ」と呼ばれた森下安道氏

三女の中学入試を相談

 田中もまた、似たような貧困の境遇から成り上がってきた森下に目をかけたようだ。あるとき森下は、以下のような田中とのあいだの裏話を打ち明けてくれたことがある。

「三女の成城学園中学入試のときに、田中総理に相談したことがありました。すでに総理を辞めていたけど、力はあったね。娘たちはみな小学生まで神奈川の森村学園に通わせてきたけど、そこからどこへ進学させるか、迷ったんです。それで小佐野さんに相談したところ、学校関係はさっぱり門外漢だと言われ、そこから田中総理につないでくれたんです」

 つまるところ政治家に対する娘の進学、入試相談だ。よくある話ではあるが、総理大臣経験者に頼むケースは滅多にないのではないか。そう問うと、森下はこうも語った。

「さすがに総理本人にそんなことを頼むわけにはいかないでしょう。だから小佐野さんが田中事務所の近藤真(仮名)さんに話せばいい、とつないでくれたんです。近藤秘書の動きは早かったよ。すぐに成城学園に電話してくれた。助かりました」

 ここもまた小佐野がひと役買っている。森下は昭和女子大に通っていた長女の就職斡旋も小佐野に頼み、小佐野が長女の保証人になっている。娘たちには幼い頃から東大生の家庭教師がついていたので、学生時代の成績は悪くなかったが、森下は子供に甘い。日本航空と全日空の大株主であった小佐野は、二つ返事で長女の就職斡旋を引き受け、長女は全日空入りできたという。そんなときの謝礼はどうするのか。田中角栄には何をしたのか。ストレートに聞いたところ、森下自身はこう告白した。

「初めは、目白のお屋敷にうかがったんです。バカラのグラスセットと英国製の銀のナイフとフォークのセットをトラックいっぱい積んでいきました。それで、近藤秘書に会うと、『こんなものを持ってきてもらっては困ります。うちの議員はグラスなんかすぐに壊してしまいますから』と断るではないですか。それなら地元の新潟にお礼を持っていこうと考えたのです」

 フランスのルイ15世が創設したロレーヌ地方のバカラのクリスタルグラスは、日本だけでなく世界中で人気だ。高い花瓶などは数千万円もする。それと英国製の食器セットだから相当高価な代物だったに違いない。

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