神薬以外にも「子供用かぜ薬を何としても手に入れたい」
これらの神薬以外で高い人気を誇るのは風邪薬の『パブロンゴールドA』だ。前出の長澤氏が語る。
「この薬は解熱鎮静成分のアセトアミノフェンが配合されており、厚労省はアセトアミノフェン製剤をコロナ治療薬として推奨しています。中国人もそれを知っているから人気があるのでしょう。日本のドラッグストアで購入したら700円ほどですが、中国の転売業者は3000~5000円ほどで転売しているそうです。
アセトアミノフェン製剤では解熱鎮痛薬の『タイレノール』も人気で品薄になり、薬局で入手しにくい状況だと聞きます」
中国からはこんな声も聞こえてくる。
「目下、母親たちが求めているのは子供用の風邪薬です。入手困難な状況が続き、“緊急時には大人用の薬の量を調整して飲んでもいい”とのネット情報が出回っているのですが、やはり心配。品質が良い日本の子供用風邪薬を何としても手に入れたい」(北京市在住の中国人女性)
昨年12月26日には厚労省が薬局やドラッグストアの業界団体に対し、一般用解熱鎮痛薬の購入制限を課すよう要請。併せて店舗側が過剰な発注をすることや備蓄目的の買い占めをしないこと、購入した医薬品を他者に売る転売行為は法律違反になる恐れがあると周知することも求めた。だが、前出の渡辺氏は、厚労省の購入制限要請の効果は未知数だと話す。
「当初、品薄店舗は局地的でしたが徐々に広がっていき、今は全国的に品薄状態が続いている。特にパブロンゴールドAなどはコデインという麻薬成分を含むため厚労省に製造申請が必要で、品薄に対してメーカーの製造が追いつかない可能性があります」
神薬の争奪戦が間もなく激化する。
※週刊ポスト2023年2月3日号