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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「あの人がいたお陰で…」 中川淳一郎氏が感謝する「出版社のウェブビジネスの礎を作った」K氏との出会い

「今の人生があるのは、K氏のお陰だ」と語るネットニュース編集者の中川淳一郎氏

「今の人生があるのは、K氏のお陰だ」と語るネットニュース編集者の中川淳一郎氏

幸運な出会いを見極め、その縁を掴む

 K氏の熱意と努力の甲斐もあって、「やってみなはれ」的なGOが役員から出て、そのプロジェクトを担う外注先である私も交えての会食がありました。K氏、N氏からの強い推薦もあったのでしょう。役員も私を気に入ってくれ、この出版業界初とも言える、一大プロジェクトに参加することができたのでした。

 それ以降、「出版社によるウェブビジネス」について各社が本気で取り組むようになりました。「あそこが本腰入れてきたぞ。オレらもやらなくちゃ……」という気持ちがあったのか、私に対して別の大手出版社から「ウチにもかかわってくれないか?」という話も複数いただきました。しかし私はK氏への恩義があるため断りました。

 そうこうする内に、出版社とウェブは切っても切れない関係となり、今の業界の状況に至ったわけです。今や各種ニュースポータルやSNSでも出版社の記事を目にしない日はありませんが、そうした礎を作ったのはK氏だったんだな、と思っています。

 そして、私自身もこのプロジェクトにかかわることができたため収入も社会的信用度も上がり、2020年11月、無事「セミリタイア」をして唐津へ移住することができました。

 もちろん、仕事をするうえで、「ん? こいつオレを利用しているな」や「この人は胡散臭すぎる。信用ならん……」と感じる人と出会うこともあると思います。でも人生、そんな出会いばかりではありません。幸運な出会いを見極め、しっかりその縁を掴むことができれば、その後の新たな出会いが一気に広がりますし、人生が好転します。

 ちょっと感傷的になりましたが、命日が近づくと恩人のことを思い出すわけです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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