中国が春節(1月22~27日)を迎え、中国人観光客の訪日が本格化している。東京や京都など、観光名所を散策する家族連れが目立つが、同様に中国人観光客の姿が多く見られるのが「薬局」だ。北京市から来日した40代男性が語る。
「ゼロコロナ政策の撤廃とそれによるパンデミックで、中国全土で薬がまったく足りていないんです。ネット通販もほぼ全て売り切れで、高額転売している人もいます。薬が手に入らないので、生姜湯とか大豆の煮汁とか、伝統医学に頼る家庭も多い。そんななか、日本に行けばまだ薬が手に入るとあって、我々の救いになっているんです。
解熱鎮痛薬の『タイレノール』や『イブプロフェン』、風邪薬の『パブロンゴールドA』などが特に人気です。それと子供用の風邪薬ですね。中国では子供たちにも感染が拡大していて、満足な治療が受けられずに苦しんでいる家庭がたくさんいますから」
そう話すこの男性もまた、都内薬局で複数の解熱鎮痛剤と『龍角散』ののど飴を購入したという。一部中国人観光客の爆買いにより、日本の薬局でも品薄が深刻化しており、「お一人様2個まで」など購入制限をかける薬局も多い。厚生労働省も昨年12月末より、全国の薬局やドラッグストアの業界団体に向け、一般用解熱鎮痛薬の購入制限を課すよう要請している。
春節最中の中国では、「余った薬を分かち合おう」という活動が各地で展開されており、雲南省昆明市では住人に対し、「帰省時に実家に余っていた薬を農村に持ち帰ろう」という通知が出された。広東省でも「薬を持って村に帰ろう」と銘打ったキャンペーンが行なわれているという。
「私たち観光客のせいで日本の薬局から風邪薬が減ってしまっていることについては、心から申し訳なく思います。ただ、中国は地方に行くほど病院も薬局も少なく、コロナに感染しながら治療を受けられない人がたくさんいるんです。どうにかして薬を手に入れて送ってあげないと死んでしまう。その事情もわかってほしいんです」(前出・北京市から来日した40代男性)