川辺謙一 鉄道の科学

三線軌、改軌、フリーゲージトレイン…「軌間」が異なる鉄道で直通運転を可能にする工夫

「軌間」を変更する「改軌」

 このような「三線軌」の問題を解決して、列車の直通運転を実現するには、「軌間」そのものを変更し、「軌間」を統一する必要があります。これを「改軌」と言います。

 先ほど紹介した山形・秋田新幹線は、在来線区間の「軌間」を1,067mmから1,435mmに「改軌」して、東北新幹線と在来線との直通運転を実現しました。それぞれの在来線区間は冬の降雪量が多い地域を走るため、「三線軌」の導入を避けたからです。

 日本では、他の鉄道でも直通運転を実現するために「改軌」が実施されたことがあります。おもな例としては、京成本線や近鉄名古屋線があります。

「改軌」が不要な「フリーゲージトレイン」

 このような「改軌」の工事には、多額の費用と長期間の運休を必要とします。そこで複数の「軌間」に合わせて左右の車輪の間隔を変えられる車両が開発されました。日本ではこのような車両が「フリーゲージトレイン」と呼ばれています。

 海外では、この「フリーゲージトレイン」に相当する車両がすでに営業運転を行っています。その代表例には、1968年にスペインがフランスとの直通運転を実現するために開発した客車「タルゴⅢ RD」があります。

 いっぽう日本では、新幹線と在来線の直通運転を可能にする目的で電車方式の「フリーゲージトレイン」が開発されました。しかし、多くの技術的課題があるため、現時点では実用化に至っていません。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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