現実に廃棄するワクチンは公式の統計より多くなる
今後もワクチン廃棄の流れは続きそうだ。名古屋大学名誉教授で医師の小島勢二さんはこう話す。
「特に不要とされそうなのが、オミクロン株対応ではないノババックスワクチン。政府は1億5000万回分を購入しましたが追加接種の需要は見込めず、大半が廃棄される可能性があります」
過去には副反応として血栓が生じるケースが海外で報じられたアストラゼネカ製ワクチンの接種率が国内でまったく伸びず、調達した5770万回分のうち12万回の接種にとどまった。政府は5770万回分のうち約4400万回分を海外に無償で提供し、残る1350万回分を廃棄した。ノババックス製はアストラゼネカ製に次ぐ「不遇のワクチン」となりそうだ。
ファイザー製、モデルナ製を含めると全国的にかなりの量が廃棄されることになる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「東京23区で100万回分のワクチンが余っているとされ、人口比率で単純計算すると全国で1000万回分が余っていると考えられます。接種対象の国民をざっと1億人とすると、接種率が10%下がると1000万回分のワクチンが不要になる。3回目接種の接種率が7割、4回目接種が6割と仮定すると、7000万回分のワクチンを廃棄することになります。捨てるにも費用がかかるので国の負担が膨らみます」
ワクチンを廃棄する場合は自治体に報告が必要だが、“抜け道”もある。前出の個人クリニックの医師が語る。
「報告が必要なワクチンは未使用のものだけです。いまのファイザー製は1バイアルから6回分もしくは7回分接種できますが、接種者が1人しかいなかったら残りの5回分、もしくは6回分のワクチンは廃棄します。こうした“開封済み”のワクチンは報告する必要がなく、現実に廃棄するワクチンは公式の統計より多くなるはずです」