政府が子育て政策重視の理由に挙げているのが、少子化で社会保障の担い手が減るという問題だ。岸田首相も施政方針演説で、「急速に進展する少子化により、昨年の出生数は80万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています」と危機感を煽っている。だが、やく氏はこれにも反論する。
「少子化対策に世の中全体で協力すれば、その子どもたちが育って、日本の産業界を支えることになるので、巡り巡ってわれわれ子どものいない世帯や子育てが終わった世代にも恩恵が及ぶという理屈は聞いてますよ。でも、そんなのこじつけじゃないですか。子どもが大きくなれば、自分の生活のために当然働くでしょう。子どもたちは将来、われわれのために働くのではなく、自分のために働くんでしょ。だからそんな理屈で少子化対策の負担を求められても困ります。
理屈を言うんだったら、少子化にもメリットはありますよ。子どもが少なければ住宅事情はよくなります。働き手がいなくなると言うが、一方で世の中はロボット化が進み、AIが人々の仕事を奪うと言われている。少子化対策で人口が増えれば、失業者が増える可能性だってあるじゃないですか」
確かに、そうなれば社会保障を担うどころではない。こちらも理屈は通っている。
※週刊ポスト2023年2月10・17日号