店員が働きやすい環境を作る秘訣
亀戸の本店で働くスタッフは13人。長年働くスタッフが多く、取材日に勤務していた4人のうち、女性2人は10年以上、男性2人は3年以上働いている。厨房はなごやかな雰囲気で、協力しながら弁当を作っていく。レジ前で弁当を受け取った70代くらいの男性客は、店員と会話を楽しんでいた。
「お孫さんを楽しませたいと1キロおにぎりを購入される方、『おいしい』と言ってくださるお客さんもいて、やりがいがあります。店長がいろいろと面白い企画を立ち上げるので、仕事が楽しい。苦労といえば、お弁当がパンパンで蓋を閉めるのが大変なことくらいでしょうか(笑)。私の天職です」(勤務13年の山本由利さん)
伊藤さんに働きやすい環境を作る秘訣を尋ねると、「口うるさいことは言わずに放っておくのが一番」と即答した。
「衛生管理に関すること以外は厳しく言いません。お弁当のメニューも好きに作っていいと伝えています。もちろん、売れなかったらすぐにやめますけどね(笑)」
伊藤さんも時間が許す限り厨房に立ち、スタッフと一緒に鍋をふるい、弁当を作る。取材日に作ったのは、ナスの肉みそ炒めとオムライスだった。
「御徒町や水道橋の店舗も合わせて、1日数時間、週に5~6日は現場に立つようにしています。店長として顔を出すのが大切ですから。経営に特別なポリシー? そんなものはありません。ポリシーを持つと変化に弱くなるので、諸行無常です。なるようになれ、みたいな感じでやっています」
取材・文/戸田梨恵 撮影/下城英悟