電気ガスといった光熱費から食材の値段までが上昇する物価高の今、日々の生活を維持するのも一苦労だ。そうしたなかで、「安い、多い、うまい」の3拍子揃った下町の弁当店は、どんな「戦略」を取っているのか。その舞台裏に迫った。
朝7時、厨房では3名のスタッフがてきぱきと働く。アジフライやトンカツを揚げ、肉を炒め、米を炊いて手際よく弁当を作る。外はまだ薄暗いが、客足は絶えない。
東京都のJR亀戸駅から徒歩数分の距離にある「キッチンDIVE」は、24時間営業の弁当店だ。目玉商品は、ご飯に揚げ物と2種類の漬け物がのった200円の激安のり弁。店頭には350円や600円の弁当のほか、揚げ物がご飯を覆い尽くし蓋が締まらないほどの激盛り1kg弁当や1500円の鰻弁当も並ぶ。
「オープンした2011年当時はリーマンショック直後でとにかく安いものが売れた時代です。マクドナルドの100円バーガーや、値下げキャンペーンの牛丼に大行列ができていました。ならば、同じように低価格で行列ができる店を作ろうと考えたのが店を始めたきっかけです」(店長・伊藤慶さん、以下同)
斬新なのは、10年以上前からSNSを駆使して、集客力をアップしてきたことだ。ツイッターで伊藤さん自らが積極的に情報を発信。YouTubeでは、ライブカメラを通して店内の様子をリアルタイムで配信している。
「フォロワーが増えれば、お客さんの確保にもつながります。そのためにはバズって話題になることも大事で、1kgの巨大おにぎりだとか、何かしらのネタを常に探して新商品を作っています」