スーパーで買ってきた豆腐をそのまま…
IT企業に勤務する40代女性・Bさんは、居酒屋で“ある光景”を目にしてから、冷奴を注文できなくなったという。
「個人経営の居酒屋で、冷奴を注文したんです。その時は何も言われなかったのですが、どうやら切らしていたみたいで、しばらくするとスタッフが、スーパーの袋に入ったお豆腐を厨房の中にいる店主に渡しているところが見えました。私はカウンターに座っていたので、厨房の様子は丸見えです。
買ってきたばかりの豆腐が、冷奴として私のもとに出されたのですが、その豆腐は私がいつも買っているいちばん安い豆腐だったんです。“原価”が丸わかりで、その店では5倍以上の値段だったのも萎えましたし、パックから出してお皿に乗せるだけって……そもそも冷奴はそういうものですが、せめて私が見えないところでやってほしかったです。それ以来ほかの居酒屋でも、よほど豆腐にこだわっているとか、特別なものでないと冷奴は頼まなくなりました」(Bさん)
「薬味がちゃんとしていればOK」の意見も
そうした事情はわかっていながらも、注文する人ももちろんいる。金融機関に勤める30代男性・Cさんは「ひと工夫あれば注文する価値がある」と考える。
「私は“こだわり”“特製”“おすすめ”という言葉に弱いので、そういったものが感じられるなら、冷奴でも冷やしトマトでも注文します。豆腐は普通でも、薬味としてみょうがとオクラがのっているとか、しらすが添えられているとか、何かオリジナリティがあれば頼む率は高いです。トマトなら、自分じゃなかなか買わないフルーツトマトとかですね」(Cさん)
あとは“危機回避”の意味合いで注文することもあるという。
「よくわからないものを頼んで“ハズレ”だったら、ショックも大きい。そんな“地雷”を踏みたくない時、やっぱり冷奴とかもろきゅうとか、素材そのままのものは“ハズレ”が少ない。どんなものかわかっているというのは、注文する時の安心感がありますよね。何より、頼むとすぐ出てくるという“待ち時間の少なさ”にお金を払っている面もあります。
ただ一方で、値上げラッシュのニュースが続くので、コスパには敏感になりました。そのままのものよりは、どうせなら何か手がかかったものを食べたいなという気持ちが強くなっているのは否めません」(Cさん)
家飲みをする人も増えた中で、居酒屋メニューの選び方にも変化が生じているのかもしれない。そこにさらに、値上げラッシュが拍車をかけているのか。(了)