観光業振興のため、2022年10月から同年12月まで全国で実施された「全国旅行支援」。年が明けた2023年は、1月10日から規模を縮小して実施されている。現行の割引率は20%(2022年は40%)で、割引上限金額は1人につき最大5000円(同8000円)。地域クーポンは最大2000円(同3000円)が付与される。お得に旅行できることから利用者は多いが、制度開始後にホテルなどが料金の値上げを実施し、利用者から「便乗」と批判の声が上がることもあるようだ。実際に、「便乗値上げに直面した」と訴える30代女性に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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昨年の「全国旅行支援」実施時、斉藤鉄夫・国交相は「値上げが必要な場合もあり、すべてが不適切とは言えない」としつつ、「便乗値上げが行われないよう事業者に周知する」と述べていた(2022年10月18日閣議後記者会見)。しかし、値上げが「適切」か「便乗」かを判断するのは難しく、現在もホテルや旅館などが期間中に値上がりしていることに憤る声がSNSなどで多くあがっている。
〈首都圏の宿泊費高騰っぷりがすごいな〉〈◯◯ホテル、全国旅行支援の割り当てが終了した途端に、値段が下がった〉〈旅行支援便乗値上げされる前にホテル予約しといてよかった〉──これらはこの1月から2月にSNSに投稿された声の一部だ。
神奈川県在住の会社員・サナエさん(仮名、36歳)は夫と5歳、2歳の子供の4人家族。先日、家族で全国旅行支援を利用しようとして「便乗値上げに遭った」と訴えている。
「次男の誕生日のお祝いで、私たち家族と義母の5名で有名アミューズメント施設へ遊びに行くことが決まりました。せっかくの機会なので1泊しようということになり、大人3人、幼児2人利用で1泊3万5000円のホテル一室を昨年12月に予約。年明けに全国旅行支援が再開するとの情報が入ったので、割引が入ってお得に泊まれる……と思ったのですが、まさかの便乗値上げで驚きました」(サナエさん、以下同)
サナエさんが予約したホテルで全国旅行支援を利用するには、一度キャンセルして予約を取り直さなくてはならなかったという。しかし、そのホテルは、全国旅行支援が開始となった直後、宿泊日もプラン内容も同じ商品が8000円値上がりし、1泊4万3000円となっていた。