一般的に、宅地と比べて農地の固定資産税は安い。では、売りたくても売れない私有地を「農地扱い」にすれば、固定資産税の節約が可能になるのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
空き家になっていた実家を解体し更地にしました。土地は大半が借地で、一部私有地があるのですが、地主が買い取りに応じてくれず困っています。
それを知った近所のかたが解決までの間、「畑として借りたい。畑にしたら農地扱いになり、固定資産税が不要になる」と言ってきました。畑の期間は農地扱いに、売却時は宅地扱いになるという、そんな都合のよいことができるのでしょうか。可能だとしたら手続きを教えてください。(兵庫県・69才・主婦)
【回答】
農地にするのは課税上の特例を得ようというのですから、建て替えまでの一時的なものではなく、本格的な耕作をして農地として利用することになります。
そして、空き地の大半は借地とのことですが、借地契約は建物所有目的であると思われます。本格的な農地にするとなると、契約で定められた用途以外に使うことになるので「違約」を指摘され、契約解除を主張される恐れがあります。しかし、この点は地主の了解を得ておけば安心です。
農地の固定資産税は市街化区域外の農地であったり、市街化区域でも生産緑地地区内の農地(生産緑地)または特定生産緑地の指定を受けていれば評価も下がり税額も安くなります。市街化区域内農地でも軽減措置はありますが、東京・大阪・名古屋の三大都市圏の農地は宅地並みの課税になり、税額が安くなることはありません。所在場所により扱いが違うので市町村の課税課で確認することが大切です。
また、建物を解体すると住宅地として受けていた課税標準額の特例の適用がなくなり、税額が上がります。借地部分の税金は地主が負担するので、地主から地代の増額を要求される可能性もあります。そのことを考えると、税額の軽減措置を受けることが確認できれば、農地にすることも選択肢になります。