競争した時点で負け
一方、「サービスを利用したことがなくとも、最初から誰もが良いというアイデア」は、“誰もが理解できるアイデア”であることを意味しています。実は、そのようなアイデアは既に世の中の多くの人が事業化に挑んでおり、「何らかの理由」で実現できていないか、良い結果が伴わなかった可能性が高いのです。
その「何らかの理由」が、発案当時の技術では実現不可能だったという理由であれば、技術レベルが向上したり、新たな技術が発明されたりすることにより、実現可能になるかもしれません。
しかし、そうであったとしても「多くの人が賛成しない、大切な真実」のアイデアのほうが大きな成功を掴める可能性は高いでしょう。なぜなら、誰もがたどり着けるニーズ(アイデア)とソリューション(技術)をベースとした事業は、競争環境が激しくなるからです。
前出のピーター・ティールは、「競争した時点で負け」とも語っています。競争環境が激しくなると、勝ち残れる可能性が確率的に減るだけでなく、たとえ上手くいったとしても価格競争に巻き込まれて、勝ち残った末の利潤がほとんど残っていない状態になってしまうからです。重要なのは、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」になることで、市場を独占することなのです。
「オンリーワン」になるためには、経験しなければその素晴らしさに気づけないアイデアに取り組むべきです。実際にでき上がったサービスを体験するまで多くの人がその素晴らしさに気づけないため、競合がほとんどない状態でサービスをブラッシュアップし続けることができます。後から参入する大手企業が資金を潤沢にもっていたとしても、事業化には最低数年かかるため、サービスを完成させた時には既に市場は独占されており、参入の障壁が極めて高くなります。資金力、顧客基盤、人的リソースで劣るスタートアップが大手企業に打ち勝ち、巨大企業になるためにはこの方法が最も近道といえます。