世界一金持ちで、世界一無謀な男と称される、米電気自動車テスラCEOのイーロン・マスク氏(50)。2022年版の世界長者番付では2190億ドル(約27兆円)で初の1位に輝いた。
当初は無謀と思われていたツイッター社の買収も実現するなど、世間からの注目を集め続けるマスク氏だが、実際はどんな人物なのか。取材者たちの証言から、その素顔をひもといてみよう。
2007年に本人に取材した自動車ジャーナリストの川端由美氏は「思い描いていた人物とは違った」と話す。
「当時、すでにシリコンバレーでは話題の人で、資金調達の能力にも長けていると聞いていたので、“華やかで弁が立つIT起業家”というイメージを持っていました。
でも実際に会って話してみると、オタク気質で自分の哲学を持ち、それを譲らない人でした。無駄なことを好まず、自分の頭の中ですでに整理されていることを簡潔に、こちらが腹落ちするように説明してくれた」
インタビューの際、印象的だったやりとりについて川端氏が振り返る。
「テスラの創業から数年経過していたので、『何年も車を作っていないのになんで会社がやっていけるのか』と聞いたんです。そうしたら、ごまかしたり変に笑いを誘ったりせず、『企業というのはポリシーがしっかりしていて、資金がショートしなければずっと運営できるんだよ』と真剣な顔で答えた。苦しい資金繰りの中でも焦ることなく、資金調達に時間はかかったものの、自分がやろうとしていることの正しさを信じていることが伝わってきました。
当時は米国の景気も停滞気味で、今みたいに資金調達は簡単ではなかった。そういう時にテスラに出資したのは、シリコンバレーで一回起業して夢を叶えた人たちでした。成功者たちにもう一回夢を見させてお金を調達してきたというのが独特ですよね。アイデアに対して、それが実現するまでの道筋を理詰めで説明できる人であり、つまらないくらいちゃんとしている人でした(笑)」