キヤノンは配当性向が高い企業として知られており、2016年と2019年、2020年には、配当性向が100%を超える配当金を出しています。その当時、投資家の間では、「キヤノンは、そろそろ減配するのではないか?」と噂され、不安視されていたという経緯があります。
2019年には、1株当たり利益116円に対して160円の配当金を出していましたが、2020年に発生したコロナ禍によって、2020年12月期には160円から80円に大幅減配しています。キヤノンは「稼ぐチカラ」のある企業ですから、2020年には配当金が120円まで回復していますが、図らずも投資家の不安がコロナ禍によって現実化してしまったと見ることもできます。
この他にも、何度も配当性向が100%を超えていても、一度も減配していない「武田薬品工業」(4502)のような企業もあります。
私の場合は、1株当たり利益を超える配当金を出し続けている企業は、内部留保金として蓄えた利益を吐き出すことになりますから、将来的に減配する可能性があると見て、慎重に判断するようにしています。
【視点2】1株当たり利益が大きく変動する企業は要注意
1株当たり利益を基準に投資先の企業を選ぶ際には、その数値が緩やかな右肩上がりを描いていることが重要です。その年によって大きく上下動するような企業には、安心して自分の資産を託す気持ちにはなれないと考える必要があります。
ある年の1株当たり利益が100円だった企業が、次の年は50円、その次の年は200円、さらに次の年には20円と変動したのでは、安心できません。「核となる事業は大丈夫なのか?」と疑いの目で見るのは当然のことだと思います。
こうした変動が許容できるのは、「ソフトバンクグループ」(9984)やトップクラスの商社くらいに限られると考えています。ソフトバンクグループは積極的に投資事業を展開していますから、何千億円の赤字を出した翌年には、何兆円という利益を出すこともあり、投資家の間ではそれがごく普通のことと受け取られています。
商社の場合は、天然ガスが出る場所を1000億円で買ったものの、利益が見込めないので減損処理した結果、1000億円の損失を出して、1株当たり利益が下がる……ということが珍しくありません。商社の稼ぐチカラは圧倒的ですから、チャレンジした結果の減損処理は、ある意味では仕方がないことだと思います。
1株当たり利益は、一定の水準を保ちながら、ジワジワと右肩上がりになっていることが大切です。明確な理由がわからずに上下動している企業の場合は、要注意と考える必要があります。