世界に先駆け、2020年9月に日本で保険適用となった治療法が光免疫療法だ。楽天グループ・三木谷浩史会長が設立した楽天メディカルによる出資も大きな話題となった。
米国立衛生研究所・国立がん研究所(NIH/NCI)主任研究員の小林久隆博士が開発した光免疫療法は、がん細胞にだけ結びつく抗体薬を患者に投与した後、レーザー光(近赤外線)を照射して薬に化学変化を起こし、がん細胞だけをピンポイントで死滅させる画期的な治療法だ。治療にかかる費用は400万~600万円とされる。国際未病ケア医学研究センターの一石英一郎医師はこう解説する。
「現在は顔や首にできる頭頸部がんのみ保険が適用されますが、この10年ほどの間に登場した数千万円もするような新薬に比べて安いうえ、治療自体が簡便です。治療に用いるレーザー光発生装置も1台約300万円と安く、医療機関も導入しやすい」
多くの革新的な治療法の保険適用が進むなか、その過程にあるのが重粒子線・陽子線治療だ。
これらはがんの種類により「保険適用」「先進医療」「自由診療」などが細かく分かれている。例えば重粒子線治療では、肺がんや食道がんは「先進医療」のため技術料の部分は全額自己負担だが、それ以外の診察、検査、投薬、入院などにかかる費用には保険が適用される。一方、大腸がんや肝がん、膵臓がんの一部や前立腺がんなどは、保険適用だ。
陽子線治療も同様で、肺がんや食道がん、腎臓がんなどは先進医療、頭頸部がんや肝臓がん・大腸がん・前立腺がんの一部は保険適用になる。東大医学部附属病院特任教授の中川恵一医師が解説する。
「通常の放射線治療ではX線(光子線)を使うのに対し、陽子線治療や重粒子線治療では質量を持つ『粒子線』を照射します。粒子線の持つエネルギーのピークを病巣の位置に合わせることで、ピンポイントに放射線を集中できます。特に重粒子線は、X線や陽子線が効きにくいがんにも効果が期待できる“究極の放射線治療”です。早期の肺がんでは、たった1回の照射で手術並みの効果が得られます」