この問題は、デジタル化できずに世界から取り残されている日本の構造的問題につながっている。世界はAI・スマホ革命による「第4の波」=サイバー社会に突入しているのに、まだ日本は企業も政府も自治体も、情報革命による「第3の波」=IT社会の後半で立ち往生しているのだ。
さらに税制で公平を期すなら、サラリーマン(給与所得者)も青色申告の対象にすべきである。具体的には、まず仕事用の書斎や机、椅子、IT機器などの購入費を減価償却・経費計上できるようにして、所得税から還付する。私が昔から提唱している「書斎減税」だ。購入した住宅の減価償却も認め、住宅ローンの金利や修繕費を経費として計上できるようにする。賃貸の場合は家賃や光熱費を収入から差し引けるようにする。
要は、自営業者らに認められてきたことをサラリーマンにも適用するのだ。そうすると、それによって全体の税収が減るのではないかと懸念する人がいるかもしれないが、私は消費拡大・経済活性化の効果のほうが大きいと思う。
重ねて言うが、インボイス制度の導入は日本の税務会計をデジタル化する千載一遇のチャンスであり、この機を逃してはならない。もともと売り上げ1000万円以下の事業者が消費税の納税義務を免除されていたことがおかしいのであり、公平に納税することを否定する声は無視して、一気呵成に断行すべきである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点 2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。
※週刊ポスト2023年3月3日号