人生の後半戦は、「お金」が特に重要テーマとなる。人生100年時代の“長生きリスク”に備えながら、どうすれば豊かな暮らしを続けられるのか。住宅ローンや年金、投資など、本特集で紹介する最新の仕組み・テクニックを駆使するか否かで、老後資産に生じる違いはなんと総計1億円に迫る──。
そんななか、自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ(リバモ)」の利用者が増加している。住宅ローンを提供する民間金融機関に資金支援などを行なう独立行政法人「住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)」の調査によると、2020年度末の貸付残高は1577億円。2013年度(456億円)に比べ約3.5倍に増加した。住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。
「リバースモーゲージとはリバース(逆)とモーゲージ(抵当・抵当権)を合わせた造語で、担保にした自宅に住み続けながら、担保評価の範囲内で融資を受けるシニア向けローンです。金利は金融機関などにより異なりますが、概ね2%前後。利用期間中の返済は利息だけで済み、本人(債務者)が亡くなった後に自宅を売却するなどして元金を返す仕組みです。子供などの相続人が自宅を引き継げなくなる可能性があることなどから、利用には相続人の同意を必要とする場合もあります」
リバモで融資を受けた後に担保の不動産価格が下落した場合、死後の元金返済が自宅売却だけでは間に合わなくなることもある。この場合、相続人が差額を一括返済する必要があるため、これまでは相続人がリバモの利用に反対するケースが多かったという。
「リバモは金融機関独自の商品と、住宅金融支援機構の60歳以上向けローン『リ・バース60』に大きく分けられます。リ・バース60には一括返済時に自宅の売却代金以上の支払い義務を負わない『ノンリコース型』があり、近年、これを取り扱う金融機関が増えました。ノンリコース型の金利は3%前後と高めですが、相続人の負担がなくなるので子供たちの理解も得やすい。最近のリバモ利用の拡大は、主にノンリコースによるものと考えられます」(山下氏)