残業・ノルマなし、仕事量が少ない、休みもしっかり取れる、でも給料はそんなに悪くない……。労働条件だけを見れば、「そんな企業があったら転職したい!」とうらやましく思うかもしれない。だが、実際にそういった職場で働いている人の話を聞くと、どこか転職を視野に入れつつも、なんとなくそのまま日々過ごしているというケースもあるようだ。将来の不安を感じながらも“ゆるい職場”に勤める人たちに、その実情を聞いてみた。
入社5年目、「成長したい」と言って周囲が辞めていく
メーカーに勤める20代男性・Aさんは、新卒入社した会社で今年5年目を迎えるが、転職を検討している。大学時代の友人らと会うたびに、必ずといっていいほど「ゆるくていいね」と言われ、心配になったからだと明かす。
「自分ではわからなかったんですが、友人たちに言われて初めて、今の職場がどうやらめちゃくちゃゆるいということを知りました。ベンチャー企業に勤める友人からは、『成長できない環境にいるのは、将来のリスクだぞ』なんて言われるくらいです」(Aさん)
Aさんは営業職。100%既存顧客のルート営業、担当取引先数は約20、直行直帰可、売り上げノルマなし。残業も繁忙期を除けばほとんどなく、定時で帰れることも多い。外回り中なら16時に業務を切り上げ、“直帰”扱いで上司らと飲み会になることもある。月に数回ある出張も楽しみの一つだ。給料面は「同年代の平均レベルくらいか、やや下」だと言う。
「一応売り上げ目標はありますが、達成しなくても何も言われません。怒られたりプレッシャーをかけられたりすることもなく、社長からは『落ち込まなくていいから、そういう月もある。無理して売り込まなくていい』と励まされるほどです。僕は入社5年目ですが、まだまだ新人扱いです」(Aさん)
一見、「こんなに楽でいい職場はない」と思うかもしれないが、「ここにいたら成長できない」と辞めていった同期たちもいたという。
「辞めていった同期のことを考えると、同い年で、自分が遅れをとっているような、不安な気持ちになります。かといって、転職するのは怖い。友人や元同期は、みんな『成長』という言葉を使うのですが、成長ってそんなに意識するものなんですかね……。『結果的に成長していた』じゃだめなのかな。自分にそういった貪欲さがないので、みんなすごいな、と思います」(Aさん)