学生時代のバンド仲間と再び音楽活動を始めて楽しみながら、孫にもギターを教える、剣道5段の腕前を呼び起こして豆剣士を指導する、卓球部で活躍した経験をもとに仲間に教えるなど、子どもの頃に得意だったことの活かし方は人それぞれです。
若い時に諦めたことや、うまくいかなかったこと、後悔があったことを、残念な人生と受け止めるのではなく、死ぬまでの「生きがいの貯金」をしてきたと考えてみてはどうでしょうか。
交通費も自腹の「無償ボランティア講師」
新たな生きがいや居場所を見つけようとする際、組織や団体と関係を持ちながら探すのが近道です。私が取材したなかに、厳しい経済環境にある家庭の子どもたちを受け入れる、無料学習塾を運営する人がいました。
ひとり親家庭や非正規雇用の家庭では、衣食住はギリギリ何とかなっても、教育にまでお金をかける余裕や時間のない家庭は少なくありません。それが「教育格差を広げている」と60代の主婦が奮起したのです。
実際の授業風景を取材させてもらいました。小学生はグループ授業で、カードを使って遊び感覚も交えた内容でした。別の部屋では中学生が講師と1対1で数学や英語に取り組んでいました。小さいホワイトボードを使って何度も書いては消しながら進めていたペア、机の上が消しゴムのカスだらけのペアなど、夢中になって取り組んでいた姿が印象的でした。
講師として来ていた元会社員3人と元高校の英語教師にも話を聞きました。元会社員は、年齢的には68歳から70歳。製薬会社や電機メーカーを定年退職した男性です。70代後半の元英語教師は、中学生に興味を持ってもらえる授業ができるように工夫を凝らすのが楽しいと語っていました。
彼は、妻の介護をしながら月に2回、1時間半ほど中学生に教えています。生徒との年齢差は約60歳。趣味である囲碁の会所に通うのと、この教室に来るのが今の楽しみだそうです。