転倒による骨折や配偶者の介護──たとえ健康な体を保つために努めていても、いつ何が起きるかわからないのが80代だ。日本の平均寿命の最新の統計を見ると、女性は87.74才、男性も81.64才と過去最高を更新している。人生100年時代を考えると、「先立つもの」が強い味方になるだろう。
人生の終盤の過ごし方「ラストプランニング」の専門家として多くの高齢者の相談に乗るファイナンシャルプランナーの岡本典子さんが言う。
「幸福度の低い80代に共通するのは強い不安感です。老いや孤独への不安は解決が難しいですが、経済的な悩みであれば老後資金を備えておくことで解消できますし、経済的な不安がなくなることで老いへの不安が軽減される人も少なくない。80代をどう過ごすかは人それぞれでしょうが、最低でも80才時点で、夫婦でいざというときのために1000万円の老後資金を確保しておきたい」
ファイナンシャルプランナーの澤木明さんも「80才時点で、1人あたり1000万円の預貯金が目安」と話す。
「2019年に金融庁が、65才時点で2000万円必要だと発表しましたが、この金額には介護資金は含まれていません。80才になれば、介護費用を考えておく必要があります。在宅と特別養護老人ホームなら1000万円が目標です。実際、私は母の介護費用に1000万円かかりました。これくらいの預貯金があれば子供に負担をかけず、自分も安心して過ごすことができます」(澤木さん)
第二の財布が心の安定を作る
確かに、1000万円の貯蓄があればゆとりある心で80代を迎えられるだろう。しかし、そこに至るまでの長く険しい道のりはどうしたら乗り越えられるのか。岡本さんは「貯蓄体質」の大切さを力説する。
「少額であっても、毎月一定の額を貯金することから始めてほしい。現役時代から毎月天引きで積み立てていくのが理想ですが、55才から始めたとしても20年間しっかり貯蓄すれば75才時点でまとまった額が手に入ります。投資であれば最長20年までの運用益が非課税になる『つみたてNISA』がおすすめです」(岡本さん・以下同)