60代後半になって離れて住んでいる夫婦もいます。夫は関西で職を持って働きながら、妻は東京の実家に住んで時々夫の家に立ち寄るとか、妻が夫とは離れて住みながら大学で教えている例などです。
また地方に住む高齢の母親の介護のために、一旦は生活の中心を地方に置いて、家族の住む都会と行き来する生活をしている男性もいました。離れて住む方が、かえって良い関係が保てると話す友人は少なくありません。「家族との結びつきが75歳以降に楽しく過ごすためのインフラになる」と語った団塊の世代の男性の言葉も印象的です。
いずれにしても夫婦仲良く過ごしている彼らの姿を見ると、きちんとコミュニケーションがとれていれば問題ないということでしょう。夫婦は死ぬまで一緒に同じ家で暮らさなければならないとまで考える必要はありません。
地域の人と交流できているかどうか
定年の前に企業で実施されるライフプランセミナーでは、夫婦を前提とした老後の話に終始していることが多く、それも男性向けの話題が中心です。とはいえ、熟年離婚や未婚者が増えているためか、シングルで定年を迎える人は少なくありません。
主に独身やひとり暮らしの方々に読んでもらうページを担当している新聞記者から取材を受けたことがあります。出来上がった記事を読んでみると、ひとりで定年を迎えた人たちのいろいろな姿が紹介されていました。
金融機関から出向した先で再雇用された男性は、週に2回パートで働きながら英会話や水泳、観劇も始めて、婚活サービスにも登録していました。自治体に勤務していた女性は、演劇やコーラスなどの趣味を楽しんでいました。当然のことですが、一人ひとりに様々な生活があって決まったモデルなどはありません。
その記事で、私のコメントも紹介されました。「私の取材した範囲では、シングルの人たちは定年後、割と順調に自立して過ごしている印象がある。家族に依存することはないし、また、家族を言い訳にせずシンプルに自分なりの決断ができるからでしょう」。今もこの印象は変わりません。