「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前)
続いて証言するC氏も昨年に日本電産を退職した。在職中は課長職にあったが、困惑したのは人事評価の制度である。
日本電産では四半期ごとに社員を5段階で評価する。それも絶対評価でなく、全体の10%に1、20%に2をつけるといった相対評価をしなくてはならなかった。
「1や2の評価が出ると給料やボーナスに大きく影響するため、若い社員が意欲を失って辞めてしまいかねない。そのため管理職は部下に『今回だけだから勘弁して』と言って順繰りに1や2の評価をつけているのが実態です。
職場では常に誰それが転職したとか、あそこの会社が転職の狙い目だといった噂が飛び交っていました。経験のあるベテランが育ちにくく、日本電産では10年勤務すれば『プロパー社員』扱いをするほどです」(C氏)
日本電産がモーター事業で一人勝ちを収める時代は終わった。車載事業の要でもある電動アクスル(EVの基幹デバイス)は、トヨタや日産、ホンダら自動車メーカーを始め欧米企業もシェアを拡大するなど、競合他社がひしめく。
この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか。