政府・日銀の「マイナス金利政策」で超低金利状態が続く日本の住宅ローンに、変化の兆しが見えてきた。昨年12月の日銀による長期金利の変動幅・上限引き上げに伴い、各銀行は住宅ローンの固定型金利を引き上げ始めている。そうしたなか、住宅ローンの「借り換え」を検討する人が増えているようだ。
一般的に、住宅ローンの借り換えが効果を発揮するのは、「現在のローン残高が1000万円以上」「返済期間が残り10年以上」で、「借り換え後の金利が現在のものより1%以上低くなる」場合とされている。実際に借り換えを行なった50代男性は「返済総額が減らせる見込み」と言う。
「2005年に金利1.5%、全期間固定・返済期間35年で4000万円のローンを組みました。毎月の返済額は約12万5000円です。その後15年間は返済を続けましたが、デフレが長引き、金利上昇の気配がないことから3年前、固定型から変動型に借り換えました。当時の借入残高2500万円を金利0.7%、返済期間20年のローンに借り換えたところ、毎月の返済額は1万円以上も減らすことができました」
このまま変動金利が大幅に上昇しなければ、トータルの返済額は金利1.5%の固定型に比べ「200万円強」削減できる計算だという。
一方、半年に一度見直される変動金利の上昇リスクに備え、変動型から固定型への借り換えを検討する人も少なくない。先行きをどう見通せばよいのだろうか。ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏が解説する。
「日銀の正副総裁は3月から4月に交代しますが、それで日銀の金融政策が直ちに変わることはないでしょう。ただし、今後の景気回復に伴い金融政策が徐々に変更されれば、長期金利が上昇していくことも考えられます。固定期間10年以上の住宅ローン金利については、足元の水準から1%程度の上昇があるかもしれません。
一方の変動金利も、それに伴って引き上げられると思われますが、それでも、足元から0.5~0.75%の引き上げで収まると考えられます。今後、変動金利の利率が固定型を上回る可能性はかなり低い。慌てて乗り換える必要はないと思います」