選択を間違えれば大変なことになるのが家選び。老後に自宅のダウンサイジングを図り、手頃なマンションに移り住むケースは増えているが、築古の物件では新たな問題が発生している。“管理会社がマンションを見捨てる”ケースが増えているというのだ。マンショントレンド評論家の日下部理絵氏が言う。
「建物の老朽化と住人の高齢化の“2つの老い”が進むなか、『これでは採算が取れない』と管理会社が撤退するケースが出てきています。物価高などの影響から管理費の値上げを求めても、住民側が納得せず管理会社の負担が増して、最後には契約を終了してしまうのです」
管理会社が撤退すると、そのツケは住人に降りかかる。マンション管理士の松本洋氏が語る。
「住人の多くが高齢者のマンションでは資金の余裕がないうえ、管理費の増額を住民が受け入れず、さらに上から目線で管理会社にきつく当たるパターンが多く、管理会社に三行半を突き付けられることが少なくない。その場合、ゴミ出しや清掃など管理はすべて自分たちで行なう必要があります。そうなると住むこともままならず、マンション生活は崩壊します」
そうした事態に陥らないためのマンション選びのポイントは何か。
「まずチェックしたいのは管理組合の懐事情です。定年後の夫婦がファミリータイプ4LDKのマンションを売却して築40年2DKで8戸のマンションに移り住んだ際、修繕費不足から、のちに大規模修繕を実施する時に修繕積立金を3倍に値上げされたうえ、1戸あたり150万円の一時金を徴収されたケースがあります。マンションを購入する時には、管理費と修繕積立金を値上げする予定があるか確認するといいでしょう」(日下部氏)
なにより、「『リセールバリュー』を意識して物件探しをするのが望ましい」と日下部氏が続ける。
「売却できるかを考慮して選ぶといいでしょう。駅から徒歩7分以内の駅近物件がマストです。7分以内なら資産価値が下がりにくい。また、そういう物件なら現役世代や若い人も入居しやすく、管理会社に見捨てられにくい」
マンション選びには長期的な視点が欠かせない。
※週刊ポスト2023年3月10・17日号