「都会風を吹かさないで」「品定めされていると自覚して」──福井県池田町の広報誌に掲載された、移住者向けの心得「池田暮らしの七か条」が物議を醸している。
〈第4条 今までの自己価値観を押し付けないこと。また都会暮らしを地域に押し付けないよう心掛けてください〉
〈第5条 プライバシーが無いと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください〉
あまりにも直截的な表現が並ぶことから、その内容が全国紙やテレビで報じられると「排他的」「高圧的」と批判の声が巻き起こった。
福井市の中心部から車で40分ほどの山間にある池田町は、県内有数の豪雪地帯。町域の約9割が森林に覆われた自然豊かな土地柄だ。現在の人口は約2300人(898世帯)で、兼業を含め3分の2近くの世帯が農業を営んでいるという。
高齢化率は45%を超え、過去5年間で人口は300人以上減。そのため町は移住政策に注力しており、役場に移住相談の専用窓口を設置している。単身者から家族連れまで対応できる3種類の町営住宅も建設。空き家改修のための補助金や子育て支援も手厚く実施している。その甲斐あって、現在では毎年20人程度が移住するという。
それだけに、今回の「七か条」が移住希望者へのマイナスイメージになるのではないかと心配する声が町内からも聞こえる。同町町民の男性が語る。
「周囲では、『あれが町民の総意と取られると池田町に誤解を持たれるのではないか』『移住検討者が池田町を敬遠するのでは』などの声が上がっています。私も移住歴10数年の町民ですが、同じ移住者には『自分たちに向けられた言葉なのか』と憤る人もいるほどです」
町内でも賛否両論渦巻く「七か条」がなぜ広報誌に掲載されることになったのか。その経緯について、池田町総務財政課の担当者に聞いた。
「池田町の33集落の区長さんが定期的に集まる区長会で移住者の話が出ました。都会の人には想像しにくいと思いますが、草刈りや雪下ろしなど、地区ごとの共同作業は年間を通じてあります。それらについて知ってもらい、移住者と集落が上手くお付き合いできる方法はないかと区長さんらが話し合い、件の『七か条』と、集落ごとに『暮らしのテキスト』を作成することになりました」