担当者は、「地元住民と移住者の間で問題やトラブルがあって『七か条』が作成されたのではない」と説明する。
多くの批判を呼んだ「七か条」だが、区長会が文言を修正するとの話は現時点で役場に届いていないという。池田町議会議員の一人はこう言う。
「特別な意図があるわけではないにせよ、『都会風を吹かさないよう』『品定めされることは自然です』などの文言が高圧的な印象を与えたことは、どこかに移住者への先入観があったからではないかと思います。一方、これまで移住された方の中にも、集落の特徴や行事などを詳しく知らないまま移住し、集落に溶け込めなかったケースがあるとも聞きます」
実際、池田町では移住者との間にこんな齟齬が生じたことがあるという。
「移住して間もない人が、集落の人から区費(自治会費)を払うよう言われた際、『使途を細かく説明してくれないと払いたくない』と答え、噂になったことがありました。草刈りや用水路の掃除など、地域を維持するための区費は、都会のマンションでいう共益費のようなもの。集落の共同作業に拒否反応を示す人は、池田町に限らず村落での暮らしは厳しいと思います」(前出の池田町町民)
不用意な発言で孤立
移住者と地元住民のトラブルは、池田町以外からも多く聞こえてくる。
「都会から移住してきた若夫婦が、町内の一戸建てを借りて住み始めた。隣人が初めて回覧板を回す際に説明せず、留守宅の玄関先に置いたところ、回覧板自体を知らなかった若夫婦は自分の家に留め置いてしまった。それがきっかけで、周囲から“回覧板を回さない非常識な人間”とレッテルを貼られることになりました」(中国地方の町の住民)
“新参者”の移住者を見る地域の目が「やっかみ」を含むこともある。
「ブランド物の洋服を身に着けていたり、高級外車に乗っているだけで、『あの人は見栄っ張りだ』と陰口を叩かれることもあります」(近畿地方の山村の住民)
移住者の不用意な発言が難を招くこともある。
「定年後に都市部からUターン移住した人が、地元にだんだん慣れて都会暮らしの自慢をするようになり、周囲から“孤立”したケースがあります。『都会は便利だった』『ここにはコンビニもなくて不便』などの発言は、聞く人によっては印象が良くないはずです」(東北地方の山村の住民)