『田舎はいやらしい』(光文社新書)の著者で自身も過疎地に暮らした経験がある花房尚作氏はこう指摘する。
「池田町の『七か条』は率直で的確な内容だと思いました。過疎地域への地方移住の心得や条件を明文化したものは初めて見た印象です」
花房氏によると、「都会風」や「品定め」といった表現は移住者と地元住民のトラブルを語る際によく出る言葉だという。
「今の田舎の過疎地域に排他性はそれほどないものの、保守性は非常に色濃くあります。これまでの平穏な生活が都会からの移住者に乱されるのではないかと不安になり『なぜこの村に来たのか』と問いたくなるのは人情。それが『品定め』と表現された感情につながっていると思います」(同前)
軋轢の背景には、過疎地ならではの暮らしの実情がある。
「都会と違い早朝から草刈りがあったり、祭りや会合への出席を求められるなど基本的には集落の一員にならざるを得ません。清掃活動に参加したり、寄り合いに出席するなど、何かと集落の人々との関係性が求められるのが普通です」(同前)
だからといって、積極的に溶け込もうとしすぎると、逆効果になることもあるという。
「これまで都市部の競争社会で培ったスキルを活かそうとガツガツ介入すれば、必ず疎まれます。『もっとこうしたほうが良い』などと地域に過剰に働きかけると、『そこまでは求めてない』とハレーションを起こしてしまいます」(同前)
濃い人間関係を積極的に楽しむ姿勢を持つことが地方移住成功の必要条件だが、「自分なりの適度なかかわり方」を探ることも大事なようだ。
※週刊ポスト2023年3月10・17日号