2022年12月に米企業・オープンAIが公開した「ChatGPT(チャットGPT)」が、世界中で大きな話題になっている。経営コンサルタントの大前研一氏はチャットGPTの登場によって、「サイバー社会の大量解雇が10年早まった」と指摘する。人工知能技術の進化が私達の雇用にどう影響していくのか、新刊『第4の波』を上梓した大前氏が解説する。
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対話型AI(人工知能)を活用したインターネット検索サービス「ChatGPT(GPT/Generative=文を生成する、 Pre-trained=事前学習された、Transformer=変化させるものの略)」の利用者が史上最速のわずか2か月で1億人を突破し、世界中で“狂騒曲”が巻き起こっている。
米ビジネス誌『フォーチュン』2月・3月号も、チャットGPTを開発した米オープンAI社の創業者サム・アルトマンを表紙にして特集を組んでいる。同誌によると今年1月に開かれた「ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)」は、この話題が占領したという。
昨年11月にリリースされたチャットGPTは、最新のAI型チャットボット(自動会話プログラム)だ。あたかも人が話しているかのように自動で会話するAI型チャットボットは、すでにアップルの「Siri」やアマゾンの「Alexa」など様々な製品があるが、チャットGPTの“能力”は、それらを大きく上回るとみられているのだ。
文章の「要約」「校正」や録音の「テキスト化(文字起こし)」もやってくれるので、それらの分野では従来の業者から仕事を奪っていくだろう。現に、前述した『フォーチュン』のエディターは「自分たちは何をすればよいのか?」「仕事がなくなる!」と嘆いている。
しかも、チャットGPTはプログラミングもできる。単なるコーディング(プログラミング言語を使ってソースコードを作成すること)なら、易々とこなせる。いま単純にプログラミングをやっているだけのIT技術者たちは、これからチャットGPTに置き換えられてしまうだろう。