携帯を使わずに“通報”できる
「正直なところ、今までのプリウスとはコンセプトから変わった印象です」
そう語るのは、試乗会で5代目プリウスを体験した元カーレーサーでモータージャーナリストの松田秀士氏だ。
「今まで継承されてきたプリウスらしいデザインが変わり、まるでランボルギーニのようにフロントガラスの傾きが強くなりました。加速の感覚が速く力強くなるなど、乗り味も明らかに変わった。トヨタのプリウスに対する考え方が、燃費と使い勝手を兼ね備えた『お買い得な車』から『所有欲を満たす車』に変化していると思いました」(同前)
前述のイベントでサイモン氏は5代目の魅力を「デザインの美しさ」「走行性能」などいくつか列挙したが、そのなかで前出・川端氏が「最大の進化」と指摘するのが「デジタル化と品質」の点だ。
「世界的にも自動車の安全基準は『頑丈さ』から『事故の予防』に変化しています。各社ともセンサーによる警告や運転支援システムに注力するなか、新型プリウスにはトヨタの予防安全機能・トヨタセーフティセンス(TSS)の最上位モデルが導入されました。300万円前後の多く売れる価格帯で高級車並みの先進安全機能が標準搭載されるのは画期的なことだと思います」(川端氏)
松田氏は搭載された「センサーの数」に驚く。
「安全機能を支えるセンサーは単眼カメラとミリ波レーダーの2種類。新型プリウスはミリ波レーダーを5か所に搭載し、前後左右を把握します。後方は接近する車、前方は障害物の有無や対向車、歩行者などを検知でき、状況によって自動でブレーキをかけたりハンドル操作を支援したりします」
TSSの機能は多岐にわたるが、なかでもドライバーにとって嬉しいのが、安全運転を“さりげなくサポート”してくれるプロアクティブドライビングアシスト(PDA)だろう。
「前方に歩行者や自転車、駐車車両がいることをいち早く検知してハンドルやブレーキ操作をしてくれるほか、割り込み車両があった時やカーブ進入時にも減速支援をしてくれます。また、ウインカー操作で右左折を判断しての自動減速機能と、ステアリングの反力を制御して車線内走行を常時維持する機能はトヨタ車で初めて搭載されました。昔より感覚が鈍ってブレーキやハンドル操作が遅れがちな高齢ドライバーには安心なシステムだと思います」(松田氏)