特徴的なのが、近年、社会問題化した「あおり運転」への通報支援だ。
ドライブレコーダー搭載車が増えたことで記録が残せるようになっているものの、あおり被害に遭っている運転中は、不安で通報したくても「すぐに携帯電話が使えない」ジレンマがあった。それが新型プリウスでは、レーダーで後方車両の接近を検知すると、警察やヘルプネット(車両の位置情報を自動送信し、緊急車両の手配を行なうトヨタのサービス)への接続を運転手に提案する機能が追加された。
運転中に急に体調が悪くなった場合も、天井のボタンを押すだけでヘルプネットに接続でき、オペレーターとの通話が可能になるという。
100年に一度の大変革期
衝突時の被害軽減機能セカンダリーコリジョンブレーキもトヨタ・ブランドでは初採用となった。停車中に後方レーダーが「追突される可能性が非常に高い」と判断すると、ブレーキを作動させて二次衝突被害を軽減させるという。
さらに一歩進んだ未来の機能として、車同士が通信でつながる「ITSコネクト」も搭載。前の車が同機能を搭載していたら自動追従機能がよりスムーズになるほか、緊急車両の接近通知や交差点での右左折時に接近する車が目視できない場合も、通信対象車が近づくと音とディスプレーで警告がされる。
車同士の通信機能が各メーカー・各車で拡充されれば、より安全な車社会が実現するだろう。この新型プリウス開発の意気込みをトヨタの広報担当者はこう語る。
「自動車産業が100年に一度の大変革期を迎え、次世代のパワートレーンとして様々な選択肢が生まれるなかで、HEVであるプリウスがこれからの時代も選んでいただける愛車であり続けるために、新型では、強みである高い環境性能に加え、『一目惚れするデザイン』と『虜にさせる走り』を兼ね備えたクルマを目指して開発を行ないました」
世界の大手メーカーはEV転換を目指して新型車を続々投入。独アウディは2026年以降の新型車をすべてEVにすると発表している。そうした流れに抗って多様性にこだわってきたトヨタの“意地”が、この新型プリウスに凝縮されている。
※週刊ポスト2023年3月10・17日号