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「不測の事態に備えるためではない」富裕層が生命保険に加入する本当の理由

国税専門官として見てきた、富裕層の生命保険の使い方とは(写真:イメージマート)

国税専門官として見てきた、富裕層の生命保険の使い方とは(写真:イメージマート)

 生命保険は一般的には、不測の事態に備えて加入するものだ。だが、富裕層にとっては、その意味合いが変わってくるのだという。新刊『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』が話題の、元国税専門官でライターの小林義崇氏が、実際に富裕層に相対してきた経験をもとに、富裕層にとっての生命保険の意味について解説する。

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 ときどき、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家から、「保険は無駄だ」といった話が聞かれます。

 たしかに日本は公的医療保険が充実しており、死亡率も高くはありません。そう考えれば、民間の高い保険料を払うより、投資などにお金を回すほうが合理的といえそうです。ましてや高齢の富裕層であれば、亡くなったとして家族が金銭的に困ることはありません。すでに子どもは独立していますし、残された配偶者の生活を守るくらいは簡単です。

 ところが現実には、富裕層のほとんどが、なんらかの生命保険に加入しています。なぜなら、富裕層ではない人にとっての保険と、富裕層の人にとっての保険は目的が違うからです。

 私もそうですが、一般に保険は「生活の保障」のためのものです。死亡保険であれば、自分が死んだ後、残された家族の生活を守るために入ります。でも、すでに億単位の資産をもっている富裕層の場合、わざわざ死亡保険に入らなくても、家族の生活は十分に守れるはず。ですから、保険料を払うのは一見すると無駄遣いのように思えますが、そうではありません。

 彼らは、相続税と遺産分割への対策として、生命保険を活用しているのです。

「相続人1人あたり500万円」の節税に

 令和2(2020)年分の相続税の統計資料を見ると、亡くなった被相続人1人あたりの
平均で約1827万円の生命保険金等が計上されています。

 亡くなった被相続人が保険料を払っていた場合、保険金を受けとった人に相続税がかかります。ただ、この生命保険金については、「法定相続人1人あたり500万円」の非課税枠が設けられていますから相続税の節税になるのです。

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