今年の中国の成長率はどの程度になるのか──。グローバル経済がスタグフレーション懸念を払拭しきれていない中で、ゼロコロナ政策廃止に伴う経済活動の活発化、実質的な金融緩和政策の継続、重層的に打ち出されるとみられる景気対策、成長戦略など、好条件の揃うとみられる今年の中国経済に対する市場の期待は大きい。
3月5日に開幕した全人代で発表された政府活動報告によれば、今年の成長率目標は昨年よりも0.5ポイント低い「5%前後」となった。今年1月にIMF(国際通貨基金)が発表した世界経済見通しでは中国の成長率を5.2%としているので、中国政府の目標はこれをやや下回る水準だ。
昨年は、ロシアのウクライナ侵攻によるグローバル経済の混乱や、ゼロコロナ政策による国内経済の停滞などの特殊要因があったため、3.0%成長に留まり、目標に対して2.5ポイントほど未達となった。今年は5年に一度の人事が刷新される年でもある。例年以上に目標達成に対する政府役人たちのプレッシャーは強いだろう。
短期的に景気を引き上げるために、消費を回復・拡大させること、所得を引き上げること、政府主導で金融機関・民間資金の導入を促し投資を拡大させることなど、総合的な政策が行われる。
もちろん、こうした景気対策は目標達成のために欠かせないだろうが、市場の注目度が高いのは長期的な産業政策の方であろう。
工業情報化部の金壮龍部長は5日、記者団とのやり取りの中で、「中国の製造業のGDP(2022年)は全体の27.7%を占め、その規模は13年連続で世界首位である」と発言している。既に量的には中国が世界を圧倒している製造業だが、質的な面でのレベルアップが進めば、日米欧の製造業にとってさらに大きな脅威となるだろう。