大手企業を中心に賃上げに踏み切る企業が相次いでいる。東京商工リサーチが今年2月に発表した2023年度「賃上げに関するアンケート」(有効回答4465社)によると、2023年度に賃上げを実施予定の企業は80.6%にのぼることがわかった。これまで2年連続で8割超の企業が賃上げを実施しており、その機運は高まるばかりだ。
ユニクロを運営するファーストリテイリングが、初任給を25万円から30万円に引き上げるなどして話題となったように、人材投資を強化する目的で、初任給の額を見直す企業も少なくない。だが、そうした賃上げの波が誰にも平等に訪れているわけではない。なかには、「新卒社員の初任給は上がるけど、既存社員の給料は上がらないまま」という会社もあるようだ。そんな会社で働く先輩社員たちからは、嘆きの声も聞こえてきた。
自分よりも給与が高い新人に仕事を教える
IT企業に勤務する20代男性・Aさんは、新卒入社から今年で5年目を迎えるが、給料については「言いたいことがある」という。ここ数年、新卒入社した社員の給与が上がっているからだ。
「新卒入社1~3年目の社員を対象に、ベースアップがあったのに、4年目以降はなくて、うまいこと調整されている気がします。自分の給与と同等か、それ以上の額をもらっている新人に、私が仕事を教えているという理不尽さがあります」(Aさん)
就活はここ数年、売り手市場だ。Aさんの会社では、経営部門が優秀な新卒者を取り込もうと必死で、初任給を引き上げて採用戦線で優位に立ちたいという思惑が垣間見えるという。
「実際、初任給引き上げによる人材確保は、一定の効果は上げているみたいで、応募も増えたと聞きました。対照的に、中堅社員たちのやる気はダダ下がりです。転職する人もちらほら出てきました」(Aさん)