財産を受け継いでいくなかで、必要となるのが「名義変更」だ。遺産で一定の割合を占めることがある、生命保険の死亡保険金の場合はどうすればよいのだろうか。
死亡保険金は、みなし相続財産として課税対象になるが、相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)と別に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある。この枠を使うため、一時払いの終身保険などに加入する事例は少なくない。
生命保険を活用した相続税対策でのポイントは、保険料を支払う「契約者」、亡くなった時に保険の対象となる「被保険者」、保険金を受け取る「受取人」が誰の名義になっているかだ。木下勇人・税理士が解説する。
「たとえば夫婦と子供1人の家族において、契約者・被保険者を夫とした保険契約で、非課税枠いっぱいとなる1000万円の保険金の受取人を妻にするか子にするか。この場合、妻を受取人にしても、妻には大きな『配偶者の税額軽減特例(配偶者控除)』【※注】があるので節税メリットはほとんどない。そこで受取人の名義を妻から子へと変更すると、非課税枠の有効活用で相続税を圧縮できる可能性があります」
【※注/配偶者が相続する場合、1億6000万円(ないし法定相続分)までは相続税が非課税となる】
注意したいのは保険金の受取人を「孫」にしているケースだ。
「生命保険の非課税枠は法定相続人しか使えません。被相続人が孫と養子縁組をしているなど特殊なケースを除いて、孫には非課税枠が適用されない。しかも、孫が財産を受け継ぐ場合は相続税が2割加算されるというルールもある。資産が十分にあって、高い相続税が発生しても孫に財産を渡したい、という場合を除いては選択肢から外れてくるでしょう」(木下氏)