離婚トラブルの種となりやすい「慰謝料」。離婚後数年経ってから請求された場合でも、支払う必要があるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
10年前に事業で失敗、そのゴタゴタで妻とも離婚(子供なし・金なく慰謝料もなし)。そこから奮起、再び事業を成功させました。そんなある日、元妻から連絡があり、用件は慰謝料。彼女曰く「今なら慰謝料を払えるでしょ」とのこと。この主張には納得いきませんが、それでも相応の慰謝料を払うべきですか。
【回答】
離婚の際に、夫婦間で金銭が授受されても慰謝料の支払いとは限りません。離婚により、それまで2人で築いた財産の清算として、金銭を支払う場合や離婚後の一方当事者の生活の支援を目的とすることもあります。
慰謝料としての金銭の支払いは、夫婦の一方が他方にした不法行為により与えた精神的苦痛を慰謝するための損害賠償です。従って、夫婦間で不法行為があったことが慰謝料支払いの前提になります。例えば、DV(家庭内暴力)をしたとか、不貞をした場合などが典型で、その場合はこれらの個々の行為が不法行為になってしまいます。
その他、こうした具体的な個々の行為の積み重ねで、婚姻関係が破綻し、離婚に至った場合には、当該離婚自体を不法行為と理解し、離婚せざるを得なくなったことに責任がある配偶者に対して、慰謝料の支払義務が認められる場合もありえます。
いずれにせよ、不法行為に基づく債権ですから、時効により消滅します。時効期間は被害者が損害発生と加害者を知った時点から3年、もしくは不法行為から、20年間権利を行使しなかったときです。