長年連れ添った配偶者から“夜の夫婦生活”がないことを理由に離婚を突き付けられた場合、拒否することはできるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
突然、妻から離婚と慰謝料を突きつけられました。理由は“セックスレス”。結婚して20年目。そりゃ多少は妻の体に飽きてしまうのは仕方がないこと。妻は自分を抱かない私ばかりを責めますが、だったら、彼女もマンネリを打破する工夫や努力をすべきです。それでも調停になれば、私は負けてしまいますか。
【回答】
法律は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とし、同居義務や相互扶助義務を課しています。また、責任として「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めてもいます。
同居して助け合って生活し、経済的負担も稼ぎに応じて分担し合おうというのが夫婦ですが、性行為を義務とする規定はありません。
しかし、最高裁は「夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項」と説示しています。
性交拒否を理由とする離婚の争いは相当数あって、「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性にかんがみれば病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるなどの特段の事情がない限り、婚姻後長期にわたり性交渉のないことは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由にあたる」とするのが基本的な考えです。