5月26日、厚生労働省と文部科学省は、令和5年3月卒の大学生の新卒就職内定率が97.3%と昨年よりも1.5ポイント上昇したことを公表した。深刻な少子化により今後のさらなる労働人口不足が懸念されるなか、企業は人材の確保を急いでいる。就職活動が学生の「売り手市場」となっているわけだが、複雑な思いを抱えているのが主に現在40代の就職氷河期世代だ。
2004年に私立大学文系学部を卒業した千葉県在住のAさん(40代男性)が言う。
「私たちの新卒就職活動の頃は有名大学でなければ何十社の採用試験を受けて1社受かるかどうかでした。エントリーシートの時点でことごとく切られ、希望の職種や会社に採用されることはまれ。私も30社以上の採用試験を受けて大学で学んだこととあまり関係がない中小メーカーのSEの職を見つけられました。我々は“切り捨てられた世代”だと認識していますし、今さら救済してほしいとも思いませんが、複数内定をもらって蹴ったりすぐに辞めたりできる今の子たちは恵まれているなと思います」
1970~1982年生まれ(大卒)の就職氷河期世代は、就職活動の時期にバブル経済崩壊の影響を受け、有効求人倍率は1倍を下回った。大卒でも派遣社員やフリーターなどの非正規雇用となるケースが少なくなく、経済的に厳しい状況に置かれる人が多かったことが少子化の原因になったとも言われている。
「ここにいても成長は望めない」
それゆえ、氷河期世代からは「今の新卒は恵まれているうえにすぐ会社を辞めて、仕事に対する考え方が甘すぎる」という意見が不満とともに噴出しているのだ。大手メーカーで人事を担当する氷河期世代のBさん(40代男性)がため息混じりに語る。
「今は売り手市場なので対面で面接をせずにウェブ選考だけで内定をもらえる子も多い。学生時代に何をやってきたか、その経験を生かしてどういう仕事をしていきたいのかという自己分析や企業研究、現役社員との交流などを十分にしないまま複数内定をもらい、入社してから会社と合わなくて辞めるというパターンが少なくありません」