躍進を続ける日本維新の会。その創設者である橋下徹氏は、自民党が下野していた時代から安倍晋三・元首相と深い関係を築いていた。自民と維新の繋がりを紐解くうえで欠かせないその2人の真の関係に、“安倍にもっとも食い込んだ記者”と呼ばれた元NHK解説委員・岩田明子氏が斬り込んだ。【前後編の前編。後編を読む】
橋下から安倍への誘い
岩田:大阪維新は橋下さんと松井一郎さんが立ち上げた政党。お二人の個性が反映され、“個人政党”とも呼ばれていましたが、お二人が退いた後も、日本維新は、消えるどころかむしろ党勢を拡大しています。世代交代に成功した珍しい例で、吉村(洋文)府知事ら若い世代に維新のスピリッツをうまく継承させたと感じましたが、いかがですか。
橋下:いや、維新のスピリッツなんて特にないんですよ。もちろん、一人ひとりは自分のスピリッツを持っていますが、前号(『週刊ポスト』2023年6月19日発売号)で述べたように、大阪都構想の看板なき今の維新のパーパス(存在意義)がはっきりしていないから、共有もできていない。
岩田:ではなぜ、うまく世代交代できたのですか。
橋下:簡単なことで、代表クラスの幹部がいつまでやるか、期限を決めたからです。僕や松井さんは維新の結成段階で、大阪都構想が否決されたら8年、実現した場合でも最長12年で辞めると決めていました。期限が決まっているから、次世代を育成しないといけないし、若手も引き継ぐときが来るので頑張る。
企業のトップには、「若手が育ってこないから世代交代できない」という人がいますが、それは逆で、あなたがトップをいつ辞めるかわからないから、若手が育たないんですよと。
岩田:目からウロコが落ちるような気がしました。
橋下:吉村さんは大阪では人気絶頂で、「ツァー(皇帝)吉村」と呼ばれていますが(笑)、彼も期限を決めていますからね。僕としては国政に出てほしいんだけど、たぶん、今の任期が終わったら政治家を辞めるんじゃないかな。