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佐藤隆太のビッグモーターCM「自主降板」、CM契約における企業とタレントの関係性の転機に

佐藤隆太のビッグモーターCM「自主降板」が今後の広告業界に与える影響とは?

佐藤隆太のビッグモーターCM「自主降板」が今後の広告業界に与える影響とは?

 中古車販売大手・ビッグモーターの保険金不正請求問題が、世間を大きく賑わせている。その渦中に、2017年から同社CMに出演していた佐藤隆太が、CMを「自主降板」した。企業側がCM契約を解除するのでなく、タレント側から降板するというのは珍しいケースだが、大手広告会社出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏は「今回の事務所の判断は適切なものだったでしょう」と述べる。中川氏が今後のCM契約における企業とタレントの関係について、解説する。

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 これまで芸能人の不倫や違法薬物使用等の不祥事報道を受けて、CM契約していた企業側から降板を要求させられたり、違約金の支払いを求められたりしたケースは多々あります。メディアがしきりと報じる違約金の額については、私は眉唾ものだと思っていますが、違約金は確かに存在します。しかし、今回のビッグモーターと佐藤隆太さんの件は、これまでとは真逆の構図。

 正直、CM契約に関しては、タレントが不祥事を起こすケースと比べて、企業側の不祥事はあまり想定されていなかった。通常、不祥事を起こした企業が、テレビCMはAC(公共広告機構)のものに差し替え、ホームページからは動画を削除するなどの対処をし、そのタレントを巻き込まないような配慮をするもの。しかし、今回は佐藤さんの事務所側から「自主降板」を発表し、そのタレントイメージを守ろうと積極的に動いてきたわけです。

 この判断は、事務所の英断だと思います。一般的にCM降板にあたって、事務所がわざわざ「降板しました」とアピールするのは稀なこと。ビッグモーターについては悪質な内情もどんどん報じられており、もし佐藤と同社が結び付けられて考えられてしまうと、タレント生命に大きな悪影響が出る。えぇ、私も「車を売るならビッグモーター!」と、巨大な佐藤が店舗に登場するCM、絶大なるインパクトでよく覚えています。

 となると、今後は「コーポレートガバナンスが機能するか不安だ」というような理由で、タレント事務所側がネガティブイメージのある会社や非上場企業の広告キャラ就任を断るケースも出てくるのではないでしょうか。

 これまでのCM出演契約書では、企業側が契約解除・違約金請求できる項目として、タレント側の不祥事やステイタスの変更(離婚しないなど)などが明記されてきましたが、今後は事務所側が「契約期間中に御社に不祥事報道があった場合は速やかに契約解除を行い、それまでの期間を元にしたイメージ低下にまつわる賠償金を要求できる」などといった項目を含めるよう、要求するかもしれません。

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