これから大学3年生の就職活動が本格化してくる時期になるが、就活の時期になって一躍注目されるのが広告代理店だ。とはいえ、電通・博報堂など大手代理店の内定は狭き門であり、広告業界志望の就活生たちの中には一緒にPR会社も受験する人もいるだろう。それでは広告代理店とPR会社の仕事内容はどう違うのか。博報堂出身で、現在はネットニュース編集者として広告代理店・PR会社との接点も多い中川淳一郎氏が、両者の違いについて解説する。
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正直「広告代理店」なんて、就職活動をするまでは知らない人も多いのではないでしょうか。業界No.1の電通にしても、大学2年生ぐらいまでは「電線を作る会社なの?」などと思う人もいるかもしれません。これは冗談ではなく、私が行った博報堂にしても、当時4年生の6月、大学の後輩に内定したことを伝えたら「えっ? お線香の会社ですか?」や「桃の生産者になるのですか?」などと言われたものです。「堂」が線香っぽくて、「博報」が桃の種類の一つ「白鳳」だと勘違いされたのだと思います。
就職活動をし始めると途端にこの「広告代理店」「広告会社」(両方とも同じもの)という存在が注目されることになります。同じマスメディア界隈でもテレビや出版社は身近な存在でしたが、これらメディアビジネスを通じて裏で繋がる広告会社が途端に「なんか面白そう!」と選択肢の一つに入ってくるわけです。
何しろ、OB訪問などしようものなら、広告会社の若手社員たちは楽しそうなことばかり言うわけですよ。「オレオレ詐欺」にひっかけ「アレオレ詐欺」という言葉もありますが、とにかく学生からすれば「すげー! アレ、○○先輩が手掛けたんだ!」みたいなことになるわけです。OB訪問を受けて気分が良くなっている若い社員が言うのは以下のようなものが多いです。実際、これらは広告代理店がやっていることです。ただ、それは若手が一人で「アレ、オレが手掛けた」というわけではなく、「皆でやった。特にスタークリエーターが主導権を握った」「広告主の下請けとして、彼らの思いを形にした」ということです。以下、「アレオレ詐欺」を箇条書きにします。
・あの商品名はオレが名付けた
・あのCMはオレが作った
・あの総合プロモーションキャンペーンはオレが主導した
・あのパッケージはオレがデザインした
・あの記者発表があれだけテレビに露出したのはオレの演出案がすごかったからだ
・芸能人なんていくらでも会えるぜ。ここだけの話だけど、○○と合コンこの前したよ
・カンヌで広告賞を取る手前にオレはいる
・オレは今、広告業界でトップクラスのクリエーター・○○さんの一番弟子だ
まぁ、こんな感じの武勇伝を学生は聞かされて、広告業界に一気に心をわしづかみにされ、電通・博報堂・ADKをはじめとした大手に加え、様々なイケイケクリエーターが立ち上げたクリエイティブに特化した制作会社“クリエイティブ・ブティック”への就職を夢見ます。
しかし、内定の数は少ないわけで、そこで突如として浮上するのが「PR会社」です。同じ広告業界として、大手広告会社と一緒に受験する就活生も少なくないと思います。