人生の終盤戦には「お金」の不安も付きまとう。そんな老後資金の不安を解消すべく、少しでも蓄えを増やすための「投資」は有力な選択肢のひとつ。だが、迂闊に手を出せば「大やけど」を負うリスクもある。
資産運用に無縁だった人が、定年退職を機に「投資」を始めるケースは少なくない。だが、消費生活アドバイザーでファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏はこう指摘する。
「まとまった退職金を元手に投資を始める、いわゆる“退職金投資デビュー”では、各金融商品の仕組みやリスクをきちんと理解しないまま手を出し失敗するケースが見受けられます。投資の経験が乏しいのに、ネットの『お勧め投資情報』や人から聞いた『儲かった話』を鵜呑みにし、いきなり暗号資産(仮想通貨)やFX(外国為替証拠金取引)などのハイリスク商品に手を出してしまうと、最悪の場合、退職金を失うケースもあります」
そのリアルケースを見てみよう。まずは、「暗号資産」に投資して大失敗したA氏のケース。一般的な円やドルなどの通貨ではなく、バーチャルな電子取引で流通する暗号資産の値動きは非常に激しい。A氏もその急騰ぶりに惹かれて2021年11月、代表的な暗号資産の「ビットコイン(BTC)」に投資した。
「友人から『BTCの値上がりがすごい』と聞き値動きを見ると、同年5月に約400万円だった1BTCが10月には700万円を突破。半年で倍近く値上がりしているのだから、まだまだ上がるはずと思い、11月に1500万円で2BTCを購入しました」
買った直後には史上最高値の1BTC=776万円まで上昇したものの、12月末には米FRB(連邦準備制度理事会)による利上げの懸念が顕在化し、大きく下落。翌2022年7月には米EV大手のテスラが保有するBTCの75%を売却したことなどから、1BTC=300万円を下回ってしまった。
「やむなく損切りを決断し、2BTCを290万円で売却。ほぼ史上最高値圏で掴む大失敗で、1年足らずで920万円も失いました……」(A氏)