故・ジャニー喜多川氏による性加害問題は、日本社会全体を揺るがす事態に発展した。ジャニーズ事務所の所属タレントを自社のCMなどに起用する取引企業は、約120社を数える。その多くが、9月7日にジャニーズ事務所が開いた会見の直後から、「CMへの起用見送り」などの方針を相次いで発表。その裏側では、どんな動きがあったのか。【前後編の前編。後編を読む】
口火を切ったのは損保と航空の大手2社
口火を切ったのは、会見直後に「起用見送り」を公表した東京海上日動と日本航空(JAL)だった。ある企業の広報担当者はこう言う。
「2社は自らリリースを出したのではなく、メディアからの問い合わせに答える形で発表しました。財界に影響力のある損保と航空の大手2社による回答が報道などで大きく拡散されたことで、メディアによる取材にも一気に火がついたのです」
それに対して各社が一斉に回答し始めたことで、“起用見送りドミノ”に発展したのだ。
東京海上日動に会見直後に公表した理由について聞くと、「昨今の報道や「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査報告書等を踏まえ、今後の広告起用は困難であると考えており、9月7日の会見を受けたメディアの皆様からのお問い合わせに対して回答したものです。
東京海上グループは、人権尊重の観点で、いかなる形態のハラスメントも認めておりません。ビジネスパートナーの皆様に対しても、そうした取り組みへのご理解とご協力をお願いしております」(広報部)と回答。
JALは、「今般、故ジャニー喜多川氏が重大事件を発生させたことが明らかになったことを受け、所属タレントを広告に起用してきた当社は『JALグループ人権方針』に則り、ジャニーズ事務所の再発防止ならびに被害者救済に関わる検討状況を注視することとし、適切な対応がとられることを確認するまでの間、起用を見送ることとしました」(広報部)と答えた。