故・ジャニー喜多川氏による性加害問題。ジャニーズ事務所の所属タレントを自社のCMなどに起用する取引企業は、約120社を数える。9月7日にジャニーズ事務所が開いた会見の後、東京海上日動と日本航空(JAL)が「起用見送り」を公表すると、スポンサー各社が追随する形で“起用見送りドミノ”に発展。そうしたなか、一部の企業では新しい契約の仕方を模索する動きも──。【前後編の後編。前編から読む】
財界でも問題をめぐって見解の相違が生まれている。経済同友会代表幹事を務める新浪剛史氏は12日、「真摯に反省しているか、大変疑わしい」「(社名継続は)被害者がどう思うか真剣に考えるべき」と厳しく批判。一方、経団連の十倉雅和・会長は9月19日、性加害問題を「断じて許されるものではない」としつつ「タレントはある意味被害者。活躍の機会を長きにわたって奪うことは問題」などと発言している。
人権問題について、日本以上に厳しい倫理基準を持つ外資系企業ならではの苦労も見られた。
「人権問題に対する日本と海外の意識・感覚の差が顕在化して本社のある本国との協議に時間がかかり、『起用見送り』の発表に時間がかかったケースもあるようです」(企業ジャーナリスト)
同じタレント個人と長く契約を続けてきた企業の宣伝担当部署からはこんな意見も聞こえてきた。
「付き合いの長いタレントさん自身が企業の良き理解者で、企業活動を支持してくれているケースもある。宣伝部署から“タレント個人には配慮した発表にできないのか”という声もあげてみたが、他部署との温度差は大きいようで、社内でも意見の振れ幅が大きいことに、広報担当者も苦労しているようでした」(宣伝担当)
さらに、ジャニーズタレントのCMをいつ打ち切るのかという問題も生じているという。
「来年の契約更新はしないと表明した企業にも『契約更新までは継続していいのか』という世間の声もある。CMの終了時期について、各社は難しい判断を迫られることになるでしょう」(前出・企業ジャーナリスト)